命を守るために
飼い主の責任とは
飼い主になるということは、猫を終生飼養(しゅうせいしよう)することです。
同時に、飼うことで周囲の人や地域に迷惑をかけることのないよう、社会に対する責任も生まれます。
外に出したり脱走を許したりすれば、地域に排泄物を放置することになるかもしれません。鳴き声や毛の飛散、臭いに迷惑する方もいるかもしれない。人にケガをさせるかもしれないし、動物が苦手な方やアレルギーのある方もいます。
妊娠したりさせたりすれば、行き場のない猫を増やすことにもなります。
飼い主のマナーが原因で、社会への迷惑になるだけでなく、不幸な猫の増加を招いているとしたら…。これほど悲しいことはありません。
私たちの願いは、すべての猫が飼い主に一生愛されて幸せに暮らすこと。
殺処分など、悲惨な運命をたどる猫を減らすためには、【責任が取れないなら、猫を不必要に増やさない】ことが大切です。
そのために、知っていただきたいこと・人間にできることをご紹介します。
知ってほしいこと
■ 猫の繁殖力のすごさ
猫は生後6~7カ月で発情期が来て繁殖可能になり、メス猫は交尾によって排卵するため100%の確率で妊娠してしまいます。
妊娠期間は約2カ月間で、一度に4~8頭を出産します。
母猫は、約2カ月後に子猫が離乳すると次の妊娠が可能になり、1年間に3~4回出産するという、繁殖サイクルがとても速い動物です。
生まれた子猫も、発情期が来て交尾すれば妊娠・出産してしまいます。
環境省では、繁殖を続けることで1匹の猫が3年後には2000頭以上になると試算しています。
■ 外には危険がいっぱい
室内飼いしている猫と野良猫を同じに考えてはいませんか?
猫は外に出さないとかわいそうと思っていませんか?
外には猫にとっての危険がいっぱいです。
交通事故や病気の感染、縄張り争いによるケガなどのリスクが非常に高くなります。
また、寄生虫の問題や、不必要な繁殖を繰り返してしまったり、虐待にあったり、保健所に持ち込まれてしまうケースもあります。
室内飼いの猫を「せまい室内ではかわいそう」と散歩感覚で外に出すと、もっとかわいそうなことになる可能性が高まります。
公共の場所での糞尿や、物を壊すなどトラブルの原因にも。
また、飼えなくなったからと「外に放す」ことは、猫を捨てる(遺棄する)行為です。
今まで人間と一緒に暮らしてご飯をもらっていた飼い猫が突然外に放り出されても、自分で食べ物を調達する術を知らないのですから、生きていけるわけがないのです。
■ 野良猫であっても餌付けをするなら、排泄の世話・避妊・去勢手術はセット
ご飯を食べれば当然、糞尿は出ます。ご飯は自分の庭であげて、排泄はよその家の庭で…となれば、ご近所トラブルの原因になります。
餌付けをするなら、排泄の世話は必須です。
猫トイレは必ず設置し、トイレ以外で排泄を見つけた場合にはすぐに片付けて掃除をするなどの処置は必要になります。
餌付けをするなら排泄の世話・避妊・去勢手術はワンセット。これができないなら、餌付けはするべきではありません。
※避妊・去勢手術をするのであれば、捕獲器を使用しますので餌付けは必要です。
■ 刑罰
猫を捨てるという行為自体が動物愛護法に触れる犯罪であるということを知らない人が多くいます。
また食事を与えない、病気を放置するという行為も虐待行為にあたり犯罪です。
数年前までは、動物を殺傷した場合の罰則は2年以下の懲役、または200万円以下の罰金でした。
しかし2019年の法改正により5年以下の懲役または500万円以下の罰金となり厳罰化されています。
動物虐待や遺棄をした場合の罰則も、100万円以下の罰金だけだったものから、1年以下の懲役が追加され、こちらも厳罰強化されています。
人間にできること
■ 避妊、去勢
上述のように、猫の繁殖力はものすごいです。
責任を取れない命を増やさないため、避妊・去勢手術をすることを強く推奨します。
《避妊、去勢のメリット》
・不必要な繁殖を制限できます。
・発情期のストレスが軽減され、性格が穏やかになり飼育しやすくなります。
・発情期の鳴き声や尿を吹き掛ける(マーキング)行動を軽減できます。
・生殖器系の病気になる確率が減少します。
■ 完全室内飼いの推奨
猫は本来、慣れ親しんだ狭い縄張りの中だけで暮らす生き物。
適度な運動ができて安全に過ごせる場所があれば、一生室内で暮らすことにストレスは感じません。
外で過ごしている猫よりも、寿命が長いといわれています。(完全室内飼い猫の平均寿命:16歳)
危険が多い外には出さず、快適な室内で飼いましょう。
《完全室内飼いのメリット》
・野良猫とのけんかによるケガの心配がなくなります。
・感染症になったり、ノミ・ダニ・寄生虫を家庭に持ち込みません。
・交通事故や虐待被害に遭ったり、迷子になったりしません。
・望まない妊娠の心配がなくなります。
・排泄や体調の異変に気付きやすく、病気の早期発見になります。
・飼い主との信頼関係が築けます。
・行動を把握し、管理しやすくなります。
・近所に迷惑をかける心配がありません。
■ 終生飼養
終生飼養とは、文字通り猫の命が終わるまで適切に飼い続けることです。
10年後、20年後も猫を飼い続けられているか、考えてみてください。
近年、獣医療の発達とペットフードの品質向上により、愛玩動物の平均寿命はどんどん延びています。猫だと完全室内飼いでの平均寿命は16歳といわれていますし、20年以上生きる猫も増えてきました。
人間と同じように、年をとれば足腰が弱くなったり、病気になったりして医療や介護が必要になる可能性があります。医療費もかかりますし、療法食やオムツ使用になる等、少なからず経済的にも負担はあります。
そこを見据えたうえで一度猫を飼い始めたら、天国に行くまで飼い続けることは最低限の責任と考えます。
飼い猫が病気になったから、思ったよりお金がかかるからなどといった理由で猫を捨てる(遺棄する)行為は絶対に許せるものではありません。